企業主導型保育園とは ─特徴や要件・メリットなどについて解説

コラムヘッダーイメージ3

保育園の種類としては認可保育園や認証保育園などがよく知られていますが、企業主導型保育園についてご存じない方は多いのではないでしょうか。企業が従業員向けに保育サービスの提供を検討する際は、企業主導型保育園についてチェックしておくことが大切です。今回は、企業主導型保育園の特徴や要件、メリットなどについて詳しく解説します。

企業主導型保育事業とは

企業主導型保育事業とは、平成28年に内閣府が制定した助成制度です。昨今では、働き方の多様化により、さまざまな保育ニーズが生まれています。企業が従業員の働き方に応じた保育サービスを提供するために、企業が保育施設を設置した際に運営費や設備費などを助成します。参考:内閣府『1. 企業主導型保育事業の制度の概要と企業のメリット』

企業主導型保育事業の特徴

企業主導型保育事業で設置する保育園のことを「企業主導型保育園」といいます。従業員の働き方に対応した保育サービスを提供するため、時短勤務や週末のみの勤務、夜勤専門など、さまざまな従業員の保育ニーズに応えることができます。また、地域の企業による共同利用、共同での設置も可能です。

企業主導型保育事業の助成金の要件

企業主導型保育事業の助成を受けるためには、複数の要件を満たす必要があります。主な要件は次のとおりです。

  • 子ども・子育て拠出金を負担している一般事業主である
  • 平成28年4月以降に保育施設を新設する

※平成28年3月31日以前に新設した保育施設でも、定員を増やしたり空きの店員を他の企業向けに活用したりする場合は対象になります。

運営は保育事業者に委託することも可能ですが、事業の適正管理の観点から再委託は認められていません。
複数の企業の従業員が利用する際は、全ての企業が共同で利用することを定める契約の締結が必要です。なお、共同利用できる企業は、子ども・子育て拠出金を負担する厚生年金の適用事業所等でなければなりません。

また、契約の形式は問われませんが、利用定員数と費用を明確に定める必要があります。

企業主導型保育園の設置・運営の基準

企業主導型保育園では、保育の質を担保するために、設置・運営に次の基準が設けられています。

┃職員の配置基準

職員1人に対して0歳児3人、1~2歳児は6人、3歳児は20人、4~5歳児は30人を上限とし、さらに合計数に1人を加えた人数の職員の配置が必要です。

例えば、0歳児3人に1~2歳児5人の場合、必要な職員数は1人(0歳児3人)+1人(1~2歳児5人)+1人で合計3人です。

また、職員の半数以上は保育士でなければなりません。それ以外の職員も、地方自治体や児童育成協会が実施する「子育て支援員研修」を修了する必要があります。

┃設備の設置基準

厚生労働省が定める「家庭的保育事業等の設備及び運営に関する基準」および「認可外保育施設指導監督基準」の遵守が必要です。

┃安全に保育を実施するための要件

保育所保育指針に基づいた保育の実施、および「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン(平成28年3月31日通知)」に基づいた対応が必要です。事故が発生した際は、「特定教育・保育施設等における事故の報告等について」で定められた事項に基づき、都道府県と児童育成協会に報告します。

┃保険の加入

独立行政法人日本スポーツ振興センターの「災害共済給付制度」、もしくは同等以上の給付水準を定める損害保険等に加入する必要があります。

┃法律の遵守・改善対応

児童福祉法の遵守が必要です。都道府県に適切に届け出たうえで、報告徴収や立ち入り調査に協力しなければなりません。

もし、調査によって改善点が認められた際は、都道府県から指導・勧告が行われます。状況次第では事業の停止や施設の閉鎖を命じられるため、健全な保育サービスを提供しましょう。

また、児童育成協会による指導・監査も毎年1回行われます。さらに、抜き打ち監査も行われるため、定期調査の時期のみ運営体制を整える方針では、改善指導の対象になるでしょう。改善が見られない場合は助成金が打ち切られる可能性があります。

企業主導型保育園を設置するメリット

企業が保育施設を設置することには、次のようなメリットがあります。

┃女性従業員の活躍を推進できる

育児を女性中心に行う家庭では、男性は問題なく働けても女性は希望通りの働き方ができない場合があります。働き方に対応した保育サービスを利用できれば、よりよい条件での労働が可能になります。また、ライフステージの変化によって、やむを得ず退社することになるリスクも軽減できるため、企業としても女性を重要なポストに配属しやすくなるでしょう。

┃企業イメージの向上

企業主導型保育園には、「企業の利用枠」に加えて、地域の子どものための「地域枠」を設けることが可能です。地域の子どもを受け入れることで、待機児童の解消に繋がるとともに、企業のイメージアップが期待できます。

まとめ

企業主導型保育園を設置することで、従業員の多様な保育ニーズに対応できるようになり、主に女性の活躍推進に繋がります。また、地域の子どもも利用できるようにすることで、企業のイメージアップも期待できます。

子どもがいる家庭が多い、女性従業員の活躍を推進している企業は、企業主導型保育園の設置を検討しましょう。