一般社団法人衆幸会 事業承継 成約インタビュー
一般社団法人 衆幸会
- 創業年月日 1972年4月
- 事業内容 保育園経営(全2園)
- 従業員数 10名
園の歴史 ─50年前の創業から、複数園への拡大まで
──園の歴史について教えてください。
私の母が昭和47年(1972年)に自宅の一室で託児所を始めたのが創業で、今年で50年の歴史があります。開設当時は女性が子供を保育園に預けて働くことが少なかったと聞いています。
私自身は、10年ほど前から衆幸会の仕事に携わりました。元々、保育とは全く別の仕事をしていたのですが、保育を通じて地元に貢献しようと働く母の姿を見て、少しでも力になりたいと考えるようになりました。
関わるようになった時点で、最初の園の開設から40年以上の歴史がありました。制度上、園の新設や移転には法人であることが要件となっていたので、事業を長く継続するために法人化しました。また、1園から複数園に拡大する経営ビジョンを立て、新たに2園を作りました。
現在は、理事として経営を見つつ、園長として園の運営に携わっています。保育理念を大切にし、現場主義で運営したいと思っています。
──保育理念はどのようなものでしょうか。
子供の主体性を重視する保育を第一としています。
昔ながらの保育は「子供は未熟だから指導しないといけない」というスタンスでした。ゆえに、子供と接するとき、命令的な言い方をする保育士が少なくありません。
私は、子供には、その成熟に応じた意思が備わっていると考えています。指示や命令は、時にその意思を否定し、様々の芽を摘んでしまうことがあります。子供の意思を尊重した保育のために、職員は、命令的な言い方をせず、できるだけ子供が自ら選択するような問いかけをするようにしています。
例えば、「靴を履いて」と言うと、子供は職員の命令に従ったことになりますが、「靴履ける?」と問いかけることで、子供が自発的に行ったという気持ちにさせます。
現場主義を取り戻すための2園への集中
──事業譲渡を考えたきっかけを教えてください。
3園に増えてから、現場から離れる時間が多くなってしまいました。私は保育現場に直接関わりたいし、職員と密にコミュニケーションを取りたかったのですが、園を移動するだけでも多くの時間を取られ、職員に保育理念を浸透させづらくなったと感じていました。こうした背景があって、近接している2園に集中したいと考えました。
1園を閉園するしかないと思っていたところ、行政から「譲渡してみてはどうか」と言われました。それまでは、M&Aというと我々が運営するすべての園が対象になるものと思っていたので、1園だけを譲渡できると知りませんでした。設備がまだ新しく、地域の保育需要を考えたとき、別の方に引き継いでいただけるのであれば、一番いいと考えました。
コンサルタントの真摯な対応
──そうした思いからエムエーウェルフェアに連絡を取られたのですね。
行政からは、早めに譲渡先を決めて欲しいと言われました。そこで「プロに譲渡先を探してもらった方がいい」と思い、ウェブ検索しました。そのうちのひとつが、エムエーウェルフェアでした。
M&Aはもちろん初めての経験で、知らない会社ばかりでしたので、正直不安でしたね。
──エムエーウェルフェアへの依頼の決め手はなんでしたか。
候補の業者の中で、最もスピーディーで、真摯に対応してくださったことが決め手でした。相談すると、すぐに来訪いただき、話を聞くうちに、この会社なら安心して任せられると思い、依頼を決めました。
スムーズな引き継ぎのための丁寧なサポート
──サポートを受けつつも、閉園という選択肢も残っていたと伺っていましたが…
閉園の可能性もゼロではありませんでした。一方で、「地域保育に貢献したい」「地元に恩返ししたい」という気持ちがあったので、「できれば閉園せずに残したい」「誰かに引き継いでもらいたい」と思っていました。
紹介を受けた譲渡先は、責任を持って承継してくれそうでしたので、譲渡を決断できました。
──譲渡先はどのような印象でしたか。
全体的に良い印象でしたが、特に、職員の定着率が非常に高いところに安心しました。人材の流動性が高い業界の中で、職員のことを思いやった経営をされていると感じました。譲渡しても職員はその園で勤務を続けることになるので、職員を託せるような先であることは、必須の条件でした。
──これから2園に専念されますが、どのように運営されたいですか。
2園の経営も決して安泰という訳ではありません。今まで中途半端になっていたことに、丁寧に取り組んでいきたいと思っています。
経営の安定には、入園者の募集が肝要です。毎年、保護者にはアンケートを実施していますが、満足度は非常に高い。子供の意思を尊重する保育理念を、ホームページでアピールし、共感してくださる方が更に集うようにしたいと考えています。
また、職員の育成にも力を入れたいと考えています。保育理念を浸透させ、職員のモチベーションを高く維持し、保育の質をさらに向上させるために、現場主義で保育環境の充実を図っていく予定です。
──事業承継を終えて、どのように感じていらっしゃいますか。
譲渡側と承継側との間には、どうしてもギャップがありますが、エムエーウェルフェアが間に入って調整していただいたき、円滑に進みました。また、行政や職員とも丁寧にコミュニケーションを取ってくださったことについても、感謝しています。
初めてのことなので他の事例と比べることはできませんが、手厚いサポートのおかげで、良い事業譲渡ができたと思っています。でも、本当の意味で譲渡がうまくいったかどうかは、数年後の子供達の成長を見てからわかることかな、と思っています。
衆幸会様、この度はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
- 取材日時 2022年3月
- 取材・制作 エムエーウェルフェア株式会社