保育児童の推移と少子高齢化問題との関係とは ─待機児童数についても解説
少子高齢化が社会問題となる中で、保育児童はどのように推移しているのでしょうか。子どもが少ないといわれる状況で保育所のニーズはあるのか気になる方が多いでしょう。そこで今回は、保育児童の推移と少子高齢化の関係や待機児童数について詳しく解説します。
目次
令和2年度の保育児童数
厚生労働省の『保育を取り巻く状況について』によると、令和2年度の保育児童の人数は以下のとおりです。
上記を見ると、定員に対して利用児童数が下回っているため、待機児童がいないように思えるかもしれません。しかし、上記のデータは全ての保育所を対象としているため、待機児童が発生していないという捉え方はできないのです。実際には、待機児童が発生している地域があります。
平成27年から令和2年までの保育児童の推移
それでは、平成27年から令和2年までの保育児童の人数をどのように変化しているのでしょうか。
平成27年度の保育所の定員は226万2,645人、利用児童数は215万9,357人でした。令和2年にかけて定員・利用児童数ともに少しずつ減少しています。一方、特定地域型保育事業や幼稚園型認定こども園など、保育所以外においては平成27年から令和2年にかけて定員・利用児童数ともに増加傾向にあります。
保育児童の推移と少子高齢化の関連
保育児童の利用者数は増加傾向にある一方で、少子高齢化問題が大きな話題を呼んでいます。
65歳以上と75歳以上が増加傾向にある一方で、0~14歳は減少傾向にあります。上記の図のように、少子高齢化が起きていることに間違いありません。その一方で保育所の利用児童数が増加傾向にあります。これは、保育所を利用する未就学児が増加しているためと考えられます。
保育所を利用する児童が増加している要因
主に保育所を利用するのは両親ともに働いている家庭であり、近年、男性が働いて女性が家事育児をメインに行う、という流れが変わってきています。
昭和55年~平成に初頭頃までは「男性雇用者と無業(無就業)の妻から成る世帯」が「雇用者の共働き世帯」の数を上回っていますが、平成4~12年頃にかけて両方の差異が小さくなっていき、平成29年には数が逆転しています。
このように、共働き世帯が増加しているため、保育所の利用児童数も増加していると推察できます。
女性の就業率と保育所の利用率の関連
女性の就業率と保育所の利用率について、どのような関連があるのでしょうか。上記グラフの通り、保育園等利用率と女性の就業率(25~44歳)はいずれも増加傾向にあります。そのため、女性の就業率が増えたことで保育所を利用する家庭が増えたと考えられます。
待機児童の推移
現在保育児童が増加傾向にありますが、それ以前では待機児童が問題となっていました。
厚生労働省の『令和3年4月の待機児童数調査のポイント』によると、令和3年4月1日時点の待機児童数は5,634人でした。平成29年度の26,081人の約5分の1にまで減少しています。
全国における待機児童数においても、全国の市区町村1,741のうち8割を超える1,429の市区町村で待機児童が解消されました。また、待機児童数が50人以上の自治体は前年の75から20まで減少しています。待機児童数が前年と比べて10人以上減少した自治体に対し、待機児童が減少した要因についてアンケートを行ったところ、「受け皿の拡大(87.6%)」「申込者数が想定を下回った(43.3%)」となりました。
また、申込者数が想定を下回った理由の中で最も多かったのは、「新型コロナウイルス感染症を懸念した利用控え(74.0%)」でした。
令和3年度から令和6年度末までに約14万人分の保育の受け皿を整備されるため、今後も待機児童が減少し、保育児童数が増加すると予測できます。保育の受け皿の整備の一例は次のとおりです。
- 保育ニーズが増加している地域の整備費等の補助率の底上げ
- 保育補助者(保育業務をサポートする人員)の活躍促進
- 保育士・保育所支援センターの機能強化
- ベビーシッターの利用料助成の非課税化 等
まとめ
保育児童は増加傾向にある一方で、少子高齢化は続いています。また、保育児童の増加とともに待機児童が減少している点にも注目しましょう。保育所のニーズは増加しているため、今後も保育所が次々と開設されると推察できます。
少子高齢化問題は保育所の経営者にとって注視すべきことのため、引き続きチェックすることをおすすめします。