保育園の数の推移 ─取り巻く環境や保育の現状について解説
少子高齢化や待機児童問題などが取り沙汰される中、保育園はどのような状況にあるのでしょうか。少子高齢化が進行すると、保育園の数は減少すると考えるのが一般的ですが、実際には増加傾向にあります。今回は、保育園の数の推移や保育園を取り巻く環境、現状などについて詳しく解説します。
保育園等を取り巻く環境
ここ20~30年ほどで、共働き世帯の増加や核家族化、地域の繋がりの希薄化など、地域を取り巻く環境は大きく変化しました。そのため、保育ニーズについても大きく変化しています。このような状況の中、子育てに関する多くの課題を解決することを目的に、平成24年8月に次の法律が成立しました。
- 子ども・子育て支援法
- 認定こども園法の一部改正
- 子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
さらに、上記3つの法律に基づき、幼児の保育や地域の子育て支援を推進するための「子ども・子育て支援新制度」が平成27年度に始まりました。この制度は、認定こども園や保育園、幼稚園などへの共通の給付の創設、地域の子育て支援の充実などを目的としています。
国を挙げて保育の充実化を推進している昨今では、保育園等の運営を始める良いタイミングと言えるでしょう。ただし、地域の保育ニーズや保育園・保育所等の数、利用児童数などの事前調査は必須です。
保育園等の数の推移
厚生労働省『保育を取り巻く状況について』によると、令和2年における保育園等の数は下記のとおりです。
- 特定地域型保育事業
- 6,911
- 幼稚園型認定こども園等
- 1,280
- 幼保連携型認定こども園
- 5,702
- 保育所
- 23,759
続いて、平成27年度の保育園等の数を見ていきましょう。
- 特定地域型保育事業
- 2,737
- 幼稚園型認定こども園等
- 582
- 幼保連携型認定こども園
- 1,931
- 保育所
- 23,533
平成27年以降に保育所以外が大きく増加しているのは、子ども・子育て支援新制度がスタートしたためと考えられます。一方、保育所の数は増減しながらも令和2年には微増となっている状況です。
┃保育園の困難な運営状況
厚生労働省は、人口減少の影響で保育園等が定員割れしている自治体があるかどうかを調査しました。
「自治体全域において定員割れが起きている」と回答したのは3.2%、「自治体の一部地区で起きている」と回答したのは13.3%とわずかでした。しかし、過疎地域・離島をはじめとした人口減少の影響を強く受けている自治体の回答を分類すると、「市町村全体が過疎地域、または離島」では「自治体の一部において定員割れが起きている」と回答したのは15.6%、「市町村の一部が過疎地域、または離島」では31.1%と、比較的高い割合となりました。
このように、保育園が増えている一方で、過疎地域では定員割れが大きな問題となっています。
保育の活性化に向けた施策
必要な地域において適切な保育を実施するためには、国の助成・支援が欠かせません。変化する保育ニーズへの対応、および保育の活性化に向けて、次の施策が行われています。
┃地域型保育事業
地域型保育事業とは、子ども・子育て支援新制度で定められる給付制度の1つです。市区町村による認可を受けた保育施設に対して、地域型保育給付を行います。また、次のような分類を設けることで、利用者が家庭の状況に適した保育施設を選択できるようになりました。
- 小規模保育 (利用定員6人以上19人以下)
- 家庭的保育 (利用定員5人以下)
- 居宅訪問型保育 (保育士やベビーシッターが自宅を訪問)
- 事業所内保育 (従業員の子どものほか、地域の子どもにも保育を提供)
┃認定こども園制度
認定こども園は、幼稚園と保育所の両方の性質を持つ保育施設です。保護者が働いているかどうかに関係なく受け入れ、教育と保育を一体的に行います。また、子育て相談や子持ち家庭の情報共有の場、子育て支援を行う機能を持ちます。
認定こども園の類型は次の4つです。
施設型給付を受けられるため、運営が安定しやすいことも特徴です。なお、設置主体は国、自治体、学校法人、社会福祉法人のみで、株式会社等の参入はできません。
まとめ
保育所等の数は増加傾向にある一方で、過疎地域や離島では定員割れが起きています。
保育所等を運営する際は地域の保育ニーズや需要・供給の状況を適切に把握することが欠かせません。今回、紹介した国の施策もチェックし、運営する保育園の種類や認可・認証を目指すかどうかなどを決めましょう。